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横浜地方裁判所 昭和54年(ヒ)128号 決定 1979年11月27日

申請人 荻原堯春

申請人 荻原富久子

申請人 日本テープ株式会社

右代表者代表取締役 荻原正光

申請人 荻原正光

右申請人ら代理人弁護士 白谷大吉

被申請人 株式会社徳田練磨工作所

右代表者代表取締役 黒田準司

右被申請人代理人弁護士 清水直

同 彌元征策

同 尾崎俊之

同 小島昌輝

主文

本件申請を却下する。

理由

第一、当事者の求めた裁判

一、申請の趣旨

申請人らが被申請人会社の取締役小幡嘉男、同小林侑郎の後任取締役の選任及び別に取締役一名の選任を目的とする同会社の株主総会を招集することを許可する。

二、申請の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二、当事者の主張

一、申請の理由

1. 被申請人会社は、資本金三七〇〇万円、発行済株式総数七四万株、一株の額面金額五〇円の株式会社であり、申請人らは、別紙目録記載の如く同会社の株式を六か月前より引続き有する株主で、その株式数の合計は、同会社の発行済株式数の百分の三をこえる。

2. 申請人らは、昭和五四年九月二一日に被申請人会社に到達した書面によって、申請の趣旨記載の事項を目的とする株主総会の招集を同会社代表取締役黒田準司に対して請求した。右書面には、招集の理由として、次の趣旨の記載がなされている。

被申請人会社の取締役は、昭和五四年四月一四日の第四一期定期株主総会で一名増員され八名であるところ、取締役小幡嘉男は昭和五四年三月一四日、同小林侑郎は同年七月三日に辞任したまま後任の取締役が選任されていない。

また、同会社の取締役会は、毎月一回開催の内規があるにもかかわらず、昭和五四年七月九日に開催された後、全く開催されていない。取締役会が一致して業務執行にあたらないばかりか、事実上その機能を喪失している異常な状態にあることは、厳しい経済情勢のもとにおいて株主の利益を損うのみならず、同会社の存立にかかわる重大な問題である。

よって、取締役三名を選任することにより取締役会を強化し、同会社の発展をはかるため、株主総会の招集を請求する。

3. しかし、被申請人会社代表取締役黒田準司は、株主総会招集の手続を行わないので、申請人らは商法二三七条二項により本件申請をする。

二、申請の理由に対する答弁

1. 申請の理由1および2の事実を認める。

2. 被申請人会社代表取締役黒田準司は、昭和五四年一一月一三日午前八時三〇分、取締役西田晄、同梅沢操、同高橋保雄、同黒田友三の出席のもとに取締役会を開き、取締役三名の選任を目的とする臨時株主総会を同月二九日午前一〇時に招集することを決議し、同日全株主に対して招集通知書を発送した。

3. 申請人らの請求する取締役三名の選任決議を目的とする株主総会の招集は、不要不急であるばかりか、同会社の現状に鑑み、会社を害する虞れが明白であり、商法二三七条の精神に反する違法なものである。

三、申請人らの主張

1. 被申請人会社主張の株主総会招集手続が行われたことは知らない。

2. 仮に右手続が行われたとしても、

(一)  被申請人会社の定款には、「取締役会招集の通知は、会日の三日前に発する。但し、緊急の必要ある場合にはこの期間を短縮することができる。」と定められているところ、同会社代表取締役黒田準司は、緊急の必要がないにもかかわらず、会日の前日である昭和五四年一一月一二日に取締役会の招集通知を発したものであるから、被申請人会社の行った株主総会招集手続は違法である。

(二)  被申請人会社が右株主総会招集の手続を行ったのは、申請人らの本件申請の却下を求めるためのものであるから、権利の濫用である。

第三、当裁判所の判断

一、本件疎明資料によれば、申請の理由1、2の事実および申請の理由に対する答弁2の事実を認めることができる。

二1. 右疎明資料によれば、被申請人会社の定款には、「取締役会招集の通知は、会日の三日前に発する。但し、緊急の必要ある場合にはこの期間を短縮することができる。」、「取締役会の議事は、取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数でこれを決する。」と定められていることおよび同会社の取締役は六名であることが認められるところ、代表取締役黒田準司が緊急の必要がないのに会日の前日に取締役会の招集通知を発したとしても、五名の取締役が出席して取締役会を開き臨時株主総会招集の決議を行ったのであるから、それが株主総会招集手続の瑕疵となることはない。また、被申請人会社が申請人らの本件申請の却下を求めるために株主総会の招集手続を行ったとしても、当然に権利の濫用となるものではない。

2. 申請人らが株主総会の招集を請求した日の昭和五四年九月二一日から被申請人会社が招集した株主総会の会日の同年一一月二九日までには六週間をこえる約一〇週間の期間が存在する。

しかし、既に被申請人会社によって同一の事項を目的とする臨時株主総会の招集手続が適法に行われていること、本件申請を認容したとしても、申請人らが昭和五四年一一月二九日までに適法な臨時株主総会の招集手続を行うことはできず、同日以後に同一の事項を目的とする臨時株主総会を再び招集する特別の必要性がないことを考慮すると、本件申請の目的は既に達せられ、その利益が消滅したというべきである。

三、よって、本件申請を却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 菅野孝久)

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